REPORTS
国立中央博物館は韓国を代表する博物館です。1945年に開館し、移転を経て、2005年から龍山に拠点を置いています。このように歴史の長い博物館ですが、最近、訪問客が急増しました。今回の記事ではその理由をご紹介したいと思います!

画像① 国立中央博物館全景
過去のBATで、図書展を紹介しましたが、読書以外にもクラシック音楽鑑賞や展覧会観覧は、若年層にとってヒップ(流行の最先端、おしゃれ)な趣味として台頭しています。例えばアイドルのように人気を集める若手ピアニストや、若い世代向けに分かりやすくクラシック音楽を開設するYouTubeチャンネルも増えています。そんな中、国立現代美術館で開催された現代美術作家「ロン・ミュエク」展はSNSで大きな話題を集め、94日間で約52万人が観覧しました。その来館者数増加幅はまさに異例。全国13の所属博物館を合わせた総来館者数は1100万人を超え、2025シーズンの韓国プロ野球累積観客数(約1200万人)に迫ると予想されています。

画像② 奥に小さく見えるのがソウルタワー

画像③ 思惟の部屋
国立中央博物館は1945年の開館以来、景福宮や徳寿宮にありましたが、2005年に地下1階、地上6階、敷地面積285,990㎡の建物に移転しました。伝統建築を現代的に再解釈し、韓国の風水地理において人が住むのに理想的な場所とされる「背山臨水」を考慮して建てられており、国立中央博物館の北側には南山が、南側には漢江が位置しています。展示館の前に立つと、建物の間からソウルタワーが見えます(画像②)。韓国最大の博物館であるだけに、常設展も特別展も多いですが、最も目を引くのは国宝である半跏思惟像のみを展示する「思惟の部屋」です。この展示室は2022年に開館し、439㎡の空間にたった二点のみを展示しており、現在の時空から離れ別の次元にいるかのような抽象的で静謐な雰囲気の中で半跏思惟像に集中できます(画像③)。

画像④ 半跏思惟像のミニチュア、酔客マッコリグラス、
虎雀図バッジ、カッしおり(左上から時計回りに)
国立中央博物館は韓国的で可愛いグッズでも有名です。代表的な展示品である半跏思惟像のミニチュア、酔っぱらった客のマッコリグラスなどが人気を集めています。
朝鮮時代に人気だった福を呼ぶカササギと厄を払う虎を一緒に描いた民画をモチーフにしたカササギと虎のバッジも発売されています(画像④)。偶然にも、Netflixで公開された人気アニメ『K-POP Demon Hunters』に、この虎雀図をモチーフにしたカササギと虎のキャラクター、そして韓国の伝統帽子である「カッ」をかぶったデーモンが登場します。K-POP Demon Huntersの世界的なヒットとともに、国立中央博物館の虎雀図バッジやカッしおりも飛ぶように売れました。韓国伝統文化への関心が、国立中央博物館の来館者数を2025年10月にはすでに500万人に押し上げたのです。

画像⑤ 扮装大会のポスターと受賞者(「慶州皇吾洞金耳飾り」)

扮装大会の受賞者(左から「金冠図」「虎雀図」)
国立中央博物館の館長は「博物館にも20代、30代を含む様々な世代の訪問が増えているだけに、こうした流れを継続するための多様な方策を模索していく」と述べ、『2025 国中博 扮装大会』を開催しました(画像⑤)。国立中央博物館の展示品にコスプレをする大会で、個性豊かな参加者の写真がオンラインで大きな話題となりました。優秀作品10チームを選出し表彰式を行い、イベント期間中には新羅金冠の土地・慶州で開催されるAPEC2025首脳会議を記念した新羅金冠フォトゾーン、韓国独立80周年を称える独立運動フォトゾーン、K-POP Demon Huntersのモチーフとなった虎雀図フォトゾーンを運営しました。表彰作品には金冠図や虎雀図も含まれていました。面白いことに、虎雀図に扮したチームはなんと全員が日本人だったそうです!揺れる金耳飾りを演じた大賞を受賞したチームの姿は圧巻で、その後、トーク番組にも出演するほどの人気を集めました。金耳飾りの正体は40代男性二人で、小学生の娘と国立中央博物館に頻繁に通って思い出を作るために参加したそうです。
展示の流行はSNSに投稿する写真を撮るためだと感じている人もいますが、デジタル時代だからこそクラシックな「体験」が重要になってきた気がします。
韓国にお越しの際はぜひ国立中央博物館にお越しください!
引用元
画像① https://www.instagram.com/p/DOn2Ze_Eobm/
画像② https://japanese.seoul.go.kr/
画像③ https://www.museum.go.kr/MUSEUM/contents/M0201070100.do?showHallId=631120&showroomCode=DM0075
画像④ https://www.museumshop.or.kr/kor/product/product_li.do?str_bcode=003000000
画像⑤ https://www.instagram.com/p/DOvOfa4Ep3X
https://www.museum.go.kr/MUSEUM/contents/M0701040000.do?schM=view&catCustomType=post&arcId=23150