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似合うよりも好きを選ぶ【タイトレンドレポート1月】

「自分らしく」「Love Yourself」。こうした言葉を、これまで何度も耳にしてきたのではないでしょうか。私たちはつい、骨格診断やパーソナルカラーのように、性格や見た目を分析・分類し、その結果をもとに「最適な選択」を探そうとしがちです。しかし近年のタイでは、そうした考え方とは少し異なる、新たな価値観が静かに注目を集めています。それは、誰かの意見や「自分に似合うかどうか」よりも、「自分が本当に好きかどうか」を基準に選ぶほうが、より心地よいという考え方です。では、この価値観は具体的にどのようなトレンドとして表れているのでしょうか。本記事では、その背景や広がりについてご紹介していきます!

「メイクは自由自在」というトレンドの始まり。

自己表現の中で、最も分かりやすく、誰にでも伝わりやすい方法のひとつが「外見」です。特にタイでは、女性を中心にメイクやファッションへの関心が高く、芸能人やインフルエンサーの影響も大きいと言われています。憧れの人と同じコスメを使ったり、服装やメイクを真似したりすることは、自分を高めるための自然な行動として受け入れられています。「メイクは自由である」という考え方が、いつ、どこから広まったのかをはっきり示すことはできません。しかし、2~3年前頃から、メイクアップアーティストの間を中心に少しずつ語られるようになってきました。ここで、タイならではの文化的背景について触れておきます。タイでは、大学の卒業式や結婚式に出席する際にも、フリーランスのメイクアップアーティストにメイクを依頼することが一般的です。その際、多くの人が「こんな仕上がりにしたい」というイメージを伝えるため、参考となる写真を事前に用意します。

画像①

これまで、メイクの参考として選ばれるのは、ほぼ決まったタイの芸能人でした。中でも圧倒的に多く名前が挙がっていたのが、「Thanaerng(タネーン)さん」(画像①)です。しかし、ここでひとつの違和感が生まれます。タイ人の多くはやや暗めの肌色であるのに対し、タネーンさんは中国系タイ人で、一般的なタイ人よりも肌が白いという特徴があります。彼女のピンク系でツヤ感のあるメイクは魅力的ではあるものの、そもそも誰もが同じように再現できるものではありません。こうした状況に対し、あるメイクアップアーティストがSNSで「肌の色が違うのであれば、自分に合った参考写真を使えばいい」と投稿したことをきっかけに、この話題は一気に広がりました。そこから、「自分がどんな外見を目指すかについて、他人が口出しするべきではない」という声が次々と上がり始めたのです。そして次第に、「自分に似合うかどうか」よりも、「自分が本当に好きなものを選ぶことは、果たして悪いことなのか」という議論へと発展していきました。

  • 画像②

  • 画像③

タイの化粧品業界は今、変革の時を迎えているのか?

近年、タイでは中小企業の誕生が相次いでおり、化粧品ビジネスもそのひとつとして大きく成長しています。業界の黎明期には、海外のコスメトレンドを追いかけることが主流で、欧米やアジアの市場で流行したものが、少し遅れてタイに入ってくるという流れが一般的でした。しかし、タネーンさんをめぐる一連の出来事をきっかけに、こうした状況にも変化が生まれ始めます。社会の成熟とともに、タイの化粧品業界でも「自分たちらしさ」や「個人の価値観」を大切にする動きが、静かに、しかし確実に広がっていきました。
そうした流れの中で、新商品のプロモーションにおいて大胆なキャンペーンを打ち出し、注目を集めたブランドがあります。それが「Cute Press(キュートプレス)」です。50年以上の歴史を持つこのブランドは、熱帯気候の環境で暮らす人々のために、「自分らしく、ユニークで、美しく、そして自信を持って生きること」をサポートするという理念を掲げています。
では、その話題のキャンペーンで取り上げられたのは、どのような製品だったのでしょうか。答えは画像③のファンデーションです。注目を集めた理由は、テレビCMを通じて発信されたメッセージにありました。

  • 画像④「自分の肌に合わないことへの不安」

  • 画像⑤「合わなくても、試していい」

画像④〜画像⑤が実際のCMですが、これまで当たり前とされてきたメイクの価値観を大胆に見直し、ファンデーション選びに新しい視点を提示したのです。その背景には、「間違ったファンデーションを選ぶと人生が変わってしまう」といった、女性の自信を損ないかねない古い考え方に縛られることなく、誰もがもっと自由にメイクを楽しんでほしいという、Cute Pressの強い思いがありました。

  • 画像⑥「すべての人に、トライする自由を」

  • 画像⑦ 美容系のトップインフルエンサー「Soundtiss」

  • 画像⑧

さらに同社は、テレビCMにとどまらず、画像⑦のようにTikTok、X、Facebookといったソーシャルメディアを活用し、幅広いコミュニケーションを展開しました。タイに伝わる女性のメイクに関することわざをユーモアを交えてアレンジしたコンテンツや、ファンデーションの色選びに悩むオンラインユーザーの声を集め、寄り添う形で紹介する投稿、さらにはクリエイティブの舞台裏を伝えるコンテンツなど、多様な取り組みが行われました。
こうした活動の象徴として生まれたのが、「ジャッジフリー・ファンデーション・バッジ」です。これは、ファンデーションのパッケージに表示されるシンボルのひとつで、従来の「やさしさ」や「持続性」といった機能的な基準の代わりに、「肌の色をジャッジしない」というブランドの姿勢を視覚的に示すものです(画像⑧)。このバッジが示しているのは、「どの色を選ぶかに正解はない」というシンプルなメッセージ。その結果、人々は他人の評価を気にすることなく、ナチュラルメイクやアースカラー、西洋風のメイクなど、自分が本当に好きなスタイルを、より自由に楽しめるようになりました。この考え方に共感した多くのタイのインフルエンサーも、その流れに加わります。彼女たちは、関連する様々なコンテンツを発信することで、この新しい価値観やアイデアを多くの人々へ届け、メイクの自由さを伝えていったのです。

人の好みは変わりやすいものです。このトレンドも、まだ始まったばかりで、どこまで広がっていくのかは分かりません。ただ、Cute Pressに限らず、他のタイのコスメブランドも、想像力を生かした商品づくりや、新しい価値観を伝える取り組みを始めています。これからは、この流れに沿った商品だけでなく、それを超える次のトレンドも生まれてくるでしょう。今後のコスメトレンドとその展開も見逃せません!

引用元

画像① : https://www.instagram.com/p/DKq_ekXzX4O/?img_index=3&igsh=MXc1azR0eXVtb3hqZg%3D%3D
画像②:https://www.cutepress.com/catalog/category/view/s/aboutus/id/230/
画像③:https://www.cutepress.com/my-match-foundation.html
画像④〜⑥:https://www.youtube.com/watch?v=hZSPMLls688
画像⑦:https://www.instagram.com/reel/DO3BMxIkYU4/
画像⑧:https://www.facebook.com/cutepress/posts/เลือกรองพื้นผิดชีวิตเปลี่ยน-รองพื้นผิดเบอร์การตัดสินบรรทัดฐานความสวย-ที่ฝังรากลึ/1185033750337580/