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ブランディングは、ビジュアル開発から始まる。【STRATEGY REPORT vol.1】

表に出ることを良しとしなかった企業。

J社は「黒子に徹する」という姿勢を長年貫いてきた投資会社。支援先の成長を陰から支えることを本領としてきたがゆえに、自社の存在意義や目指す姿を社外に向けて語る機会も必要性も、これまでありませんでした。しかし、株式上場という転換点を前に状況は変わりました。投資家や市場に向けて、自社の価値観や将来像を明確に伝える必要が生じたのです。「私たちは何者で、何を目指しているのか」。これまで誰も語ってこなかった問いに、真正面から向き合うことになりました。

既成概念を壊すオリジナルワークショップ。

プロジェクトの中核に据えたのは、社員参加型のワークショップ。ただし、一般的なブランディングワークショップとは一線を画すものでした。「自社をラーメン屋に例えるとしたら?」。そんな問いを皮切りに、業界の常識や肩書きをいったん脇に置き、既成概念にとらわれない発想で自社の価値を掘り起こしていきました。ワークショップに参加したJ社の社員約30名を5チームに分け、各チームが思いもよらない切り口から”自社の本質とは何か”を問い直す。一見ユニークに見えるこのアプローチには、明確な意図がありました。日常業務の文脈から離れることで、”当たり前すぎて見えていなかった価値”が浮かび上がるのです。議論を重ねる中で、各チームがぶれない価値を言葉として絞り出し、スローガンへと結晶させていきました。

言葉は意味を固定する。ビジュアルは解釈の余地を与える。

一般的なワークショップはスローガンの完成をゴールとすることが多いですが、このプロジェクトでは、生まれたスローガンをもとに弊社のデザイナーがポスターを制作。デザイナーはワークショップの議論の記録を丹念に読み込み、言葉の背景にある想いや、J社が目指す企業像を深く読み解くところから作業を開始しました。ここで重要なのは、デザイナーが”スローガンを飾るビジュアルを作る”のではなく、”スローガンに込められた意味を、言葉とは別の回路から届ける”という役割を担ったことです。言葉は論理に訴える。しかし、ビジュアルは論理を介さず感情へ直接触れる。グラフィック、色、構図、それらが折り重なり醸し出す世界観が、スローガンを”読む”のではなく”感じる”体験へと変えるのです。

開発プロセスも、単純にデザイナーが開発と修正を繰り返すのではなく、デザイナーが提示したビジュアルに対して、「この色では伝わらない」「このモチーフは自分たちらしくない」など議論とブラッシュアップを重ねることに重きを置きました。5チームそれぞれで完成したポスターの隅々には、その熱量が宿っていました。だからこそ、自分たちのビジュアルとして受け取ることができ、通り過ぎることなく立ち止まるのです。そして、見るたびに意味を反芻するのです。言葉は意味を固定してしまいますが、ビジュアルには余白があります。目指すべき方向性を力強く示しながら、同時に、見る人それぞれの解釈を受け入れる懐の深さがある。営業担当はそこに”顧客との向き合い方”を見出し、管理部門の社員は”組織のあり方”を重ねる。一人ひとりの解釈の積み重ねが、やがてブランドを組織の血肉として根付かせていくのです。

ブランドは語られることで育つ。

さらに、ポスターは社外への波及効果も生みました。来訪した取引先から「このポスターはどういう意味ですか?」と質問され、問われた社員が、込められた背景や想いを自らの言葉で語る場面が生まれたのです。インナーブランディングのツールがアウターコミュニケーションの起点となり、人と人との対話を生み、ブランドを組織の外へと広げていきました。J社の事例が示したのは、スローガンの完成はブランディングのゴールではなく、スタートだということです。言葉をビジュアルに変え、そのビジュアルが社員の誇りとなり、対話のきっかけとなる。このプロセスを設計することこそが、ブランドを生きたものにすると私たちは考えています。

本プロジェクトの詳細やブランディングについてご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。