REPORTS

コーポレートサイトを開いた時、あなたがそこに”その企業らしさ”を感じることはどれくらいあるでしょうか。多くのサイトが、トップに大きなビジュアル、スクロールすると事業紹介、採用情報へのリンクといったように、よく似たつくりを採用していることに気がつくと思います。これは、様々なWEBサイトが開発されて分析・改善されていく中で、効果が出るノウハウが普及していき、多くのサイトがその最適解を採用している結果だと言えます。しかし一方で、似たようなつくりのサイトが増え続けることで、当然ながら、各企業の独自性は埋もれていきます。この課題を解決する一つの方法である「モーション」について、今回はお話します。
プロジェクトの中核に据えたのは、社員参加型のワークショップ。ただし、一般的なブランディングワークショップとは一線を画すものでした。「自社をラーメン屋に例えるとしたら?」。そんな問いを皮切りに、業界の常識や肩書きをいったん脇に置き、既成概念にとらわれない発想で自社の価値を掘り起こしていきました。ワークショップに参加したJ社の社員約30名を5チームに分け、各チームが思いもよらない切り口から”自社の本質とは何か”を問い直す。一見ユニークに見えるこのアプローチには、明確な意図がありました。日常業務の文脈から離れることで、”当たり前すぎて見えていなかった価値”が浮かび上がるのです。議論を重ねる中で、各チームがぶれない価値を言葉として絞り出し、スローガンへと結晶させていきました。
多くの企業がWEBサイトを構築する際に参考にするのは、業界の先行事例やテンプレートとして普及した構成パターンです。CMSの普及により、高品質なテンプレートが簡単に手に入るようにもなりました。限られたリソースの中で、ベストプラクティスに倣うことは、合理的な判断と言えます。ただ、その結果として生まれる課題もあります。ロゴやカラーを変えれば、別会社のサイトと見分けがつかないほど、サイトのつくりに差異がないケースが多いのです。企業の規模や業種を超えて、”WEBの正解が均質化しつつある“ということです。ブランドとは差異の記憶です。どの企業も同じ正解を採用するほど、それぞれの個性を伝える要素は少なくなってしまいます。
弊社ではその解決手法の一つとして「Motion Identity」を活用。企業の独自価値やストーリーを”動き”で表現しています。ブランドを構成する重要な要素として、ロゴ、カラー、タイポグラフィーといった視覚要素がありますが、WEBにおいては、それが”どのように動くか”も、企業の印象を形成する重要な要素になります。
実際に、均質になりがちなコーポレートサイトのコンテンツにモーションを加えることで、企業の個性を表現した事例をご紹介します。
経営理念やミッション・ビジョン・バリューは、企業ブランドの根幹に据える重要な要素にも関わらず、コーポレートサイトではテキストや図解といった説明的で無機質なコンテンツになりがちです。島津製作所のサイトでは、サブグラフィックのグレーと赤のラインを取り巻くようにヒストリー画像が螺旋状に動くことで、脈々と継承されてきたDNAを直感的に体感できるように演出しました。
歴史ある企業ほど情報の多い沿革。これまでの積み重ねがあってこそ企業の今がありますが、一般的なコーポレートサイトでは、過去の事実が年代ごとに記載されているつくりになりがちです。バンダイナムコのサイトでは、3Dとモーションによるロゴの吹き出し演出によって、歴史の中に没入していくような感覚を設計しました。読むのではなく、ワクワクするような体感を届ける。エンタメ企業らしさを体現したサイトとして完成させました。
上記2社のサイトをご覧いただければわかるように、動きの演出そのものが、その企業らしさを表現することに繋がります。コーポレートサイトを設計する際は、”どのような動きで自社らしさを伝えるか”が一つのポイントになることは間違いないと思います。
今回のモーション以外にも、3D、サウンド、コンテンツ、構成、インタラクションなど、ブランドの個性を表現する方法は多岐に渡ります。今後は、それらの手法に関しても事例をまじえながらご紹介していきたいと思います。