愛され続けるワケがある

子曰く、「吾れ十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲する所に従いて、矩(のり)を踰(こ)えず」

これは、2500年以上も前に編纂された「論語」の一節で、孔子のライフサイクル論を示した言葉です。現代でもビジネスや人生に役立つとして「論語」をテーマにした本が人気書籍や注目書籍に姿を見せるのでご存知の方も多いでしょう。人間にライフサイクルがあり古くから多くの人によって考えられてきたのと同じように、ブランドにもライフサイクルというものが存在します。一般的にブランドのライフサイクルは導入期、成長期、成熟期、衰退期までの4つのステージに分けられ、成長期から成熟期においてブランドの売上/利益が最大化すると考えられています。ブランドは、このライフサイクルの中での動きをコントロールして、成熟期→成長期をキープすることでロングセラーブランドとして市場に君臨し続けることができるのです。

そんなロングセラーと言われるブランドの1つが、「明治ブルガリアヨーグルト」です。1971年に「明治プレーンヨーグルト」として発売され、1973年におなじみの「明治ブルガリアヨーグルト」に名前を変更して以来、50年近くもの間、本場ブルガリアのヨーグルトの美味しさを提供し、ヨーグルト市場の代表格として生活者に選ばれ続けてきました。そんなブルガリアヨーグルトの成長期成熟期を維持する秘訣は何か?それは、時代の変化にあわせたブランドの微調整→アップデートにあると言えるでしょう。使用する乳酸菌や乳、製法をリニューアルすることで変化し続ける生活者の好みに味をあわせると同時に、時代にあわせてパッケージのデザインをアップデートして常に新しいユーザーを取り込み続けているのです。1971年の誕生以来、およそ2年に一度のペースでデザインの微調整→アップデートが行われていることをご存知でしょうか。ブルガリアブランドの資産価値である青や白のカラーといった特徴を残しながら新しい世代に向けたアップデートを続けることで、ブランドの独自性とそれまでのファンを維持しつつ若者を惹きつけることに成功しているのです。

老朽化したロングセラー

アジア諸国で100年以上もの間、多くの生活者の健やかな毎日を支えてきた健康食品のAは、高い認知度と信頼性を誇る健康食品市場のトップブランドですした。しかし、長い歴史によってブランドの老朽化が進みミドル以上のための古いブランドというイメージが定着して、30代以下の若者から支持を思うように得られずにいました。また、Aを販売している各国では、国ごとの文化の違いによってユーザーの使用シーンや販売チャネルが異なり、さらに各国で異なる競合が存在している状況でした。そして、その競合達はトップブランドであるAのユーザーを取り込もうと、あるものは同じようなブランドカラーを使ったり、あるものは似たモチーフを使ったりと、Aのパッケージが競合に似てきてしまっているという課題も抱えていました。

そこで、若者にもAが自分のためのブランドであると認めてもらう方法と、各国仕様にローカライズされるパッケージのベースとなるデザインのリニューアルを模索して、ブラビスはにブランディングが依頼されました。

ブランドとターゲットを知る

ロングセラーブランドのAを若年層のターゲットにも選ばれるブランドに変身させるために、Aが持つ価値の洗い出しやイメージ調査、ターゲットの意識調査、日本を始めとするアジア圏で若者をターゲットにした飲料のブランド調査等を、Aが販売されているアジア諸国で実施。各国で異なる市場の特徴やターゲットの志向を把握するところからプロジェクトはスタートしました。

資産の維持と新たな魅力

Aを摂取することによる身体や脳への効果感はターゲットもよく理解していましたが、やはりミドル以上のためのブランドというイメージや使用シーンがネックとなって若者層の積極的な利用に繋がらない現実が、調査から明らかになりました。そこで、生活にAを取り入れやすくするべく、ターゲット層の行動意識をもとに想定使用シーンとコンセプトを設定。さらに、若者向けのブランド事例からターゲットに好印象をもたらす要素を抽出することで、対策となる仮説を構築しました。加えて、競合ブランドや店頭調査を通じて、売り場における目立つ見え方の分析を行い、ターゲットに響くブランドの条件が作り出されました。しかし、Aが長い年月をかけて積み上げてきたブランドの効果感や信頼感、そしてトップブランドとして従来のファンに選ばれ続けてきた魅力が現行のパッケージには生きています。そこでブランドの資産となっていた色やモチーフといった特徴を維持しながら、ターゲットに響く条件と掛け合わせることで、従来のファンを手放すことなく新たなターゲットを取り込む魅力的なパッケージブランディングを行ったのです。

100年後にも愛される

デザインしたAの新しいパッケージは、プロトタイプを製作して消費者調査を行うことで、消費者のリアルな意見を取り入れながら最終化が施されています。このリニューアルで立ち止まることなく継続してアップデートを行っていくことで、100年後でもお年寄りから若者にまで愛される強いロングセラーブランドになることでしょう。