ブランドは集約されつつある
大きく成長した企業も、そのきっかけは一つの商品であることが少なくありません。味の素、ヤクルトなどは、創業以来または成長期まで牽引した商品/サービスが強いブランドとなって、コーポレートブランドとしても機能しています。これはブランドが出所表示機能として識別性があるだけでなく、強い商品/サービスブランドから期待される品質感や安心感などを、他の商品/サービスにも波及させる「アンブレラブランド」としての効果があるからです。近年、富士重工は乗用車の事業ブランドであったスバルブランドをコーポレートブランドとしてリブランディングし、楽天も様々なサービスを順次楽天ブランドに転換し、強いブランドをコーポレートブランドとして活用しています。インターネットの誕生以降、流通する情報量が飛躍的に増大し、ブランドコミュニケーションへの労力や費用が上がったことにより、複数のブランドを展開するハードルが上がったため、効率の良いブランドコミュニケーションを志向する流れがこの背景にあると考えられます。
家電メーカーのダイソンは、「吸引力が落ちない唯一の掃除機」で有名な企業です。仮に、ダイソンと大手総合家電メーカーのそれぞれのロゴが付された冷蔵庫があるとします。総合家電メーカーの製品にはその歴史や企業規模からくる安心感があるものの、ダイソンの製品には「なにか特別な機能があるのではないか」「全く新しい技術が使われているのではないか」と、魅力を感じるのではないでしょうか。これは、ダイソンが「限られた製品カテゴリー」で「先進的な製品」を展開する、というブランドイメージを持つからです。
ブランドには、認知度に由来する有名性だけではなく、期待を抱かせる提供価値も重要であり、範囲が特定・限定されている方が強いイメージを保持しやすいケースもあります。