社会活動が評価される時代
様々な技術が進化した現代においても、経済格差や環境問題、教育問題、食糧問題、ジェンダー格差など、世界には多くの社会問題が存在しています。それらに対して、発展途上国・先進国を問わないSDGsのような取り組みが生活者にまで認知され始め、問題意識が世界的に高まってきていると言えます。
企業が営利活動において社会問題に対応することで経済的価値と社会的価値の両方を実現するCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)という概念が、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授らによって発表されたのが2011年のこと。現代マーケティングの父と名高いノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授のフィリップ・コトラー氏も、2010年に出版した著書においてマーケティング3.0を提唱し、世界をより良い場所にしていくことに企業の価値を見出しています。
GE、IBM、ネスレなどのグローバル企業は、社会的活動と企業の業績の関係性を認め、CSVを経営に取り入れ始めました。日本経済新聞社による上場企業など国内637社を対象としたSDGs経営調査(2019年)では、SDGs偏差値が高い企業ほど時価総額が伸び、営業利益率が高いことが明らかになっています*1。
世界に2万8000店舗を展開するスターバックスは、プラスチックストローを2020年までに廃止することを表明することで、世界中の消費者に絶大なインパクトをもたらしました。一方、複数の企業が連携することで、社会的意義のある活動を展開する例も出てきています。日産自動車とJオイルミルズは、隣接する両社の横浜工場で互いに必要とする電力と熱エネルギーを供給しあうことで省エネルギー化に取り組んでいるのです。複数の企業が大きな枠組みで協力することによって、一社では実現の難しかったより大きな成果を得られる活動を展開していくことが可能になるでしょう。それらの活動やそれに取り組む企業が、投資家や一般消費者から評価を得られる時代が到来しているのです。
*1 2019/12/2 記事:初のSDGs調査発表、重要な株式投資視点に/SDGs「企業の番付表」 上位集団は財務も強く